「写真家山田彰一に迫る」
インターネット・インタビュー

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平成15年9月1日「月刊デジカメ作品編集部制作」担当:神原


   (編集部注記)   プロ写真家の山田彰一氏のご好意で、このイン ターネット・インタビューが実現しました。お忙しい身なのと月刊締切りの時間的制約があり、山田氏にはご無理をお願い して要点だけをお答え頂きました。数行の言葉ではとても語り尽くせぬものです。山田氏も、「この重大なご質問に対し、 一発でお答えしてしまうと、膨大なコピー量(私では入力できない(笑)になってしまうとも思います。ほとんど私の半生記 になってしまいます(笑)」とおっしゃられておりました。読者のみなさにおきましたはその旨ご理解頂きたいと思います。


きっかけ

(編集部):   お忙しい中、インターネット対談の申し入れを御快諾頂きましてありがとうございました 。この対談のきっかけとなったのは、木村元一氏がモデレーターになっておりますヤフーグループ「dgck」に、幸か不 幸か(^_^)、山田さんが顔を出されたことにありますが、これは木村さんが特に興味がおありのことと思いますが、どのよう にして「dgck」の存在をお知りになったのでしょうか?

(山田):   デジタル写真関連の他のMLを利用しています。MLはWebとは一味違った情報が 得られます。Yahoo egroupsで探してたまたまdgckを見つけたので登録させていただきました。

(編集部):   大変月並みなことをお伺いしますが、そもそも写真を職業として選択なさ れた理由はどんなものだったでしょうか?

(山田):   子供のころからの希望でした。大学受験では日大芸術学部写真学科だけを受 けました。ここを出てもカメラマンになるのは全体の1/3くらい、といわれています。えらそうな言い方ですが私にとって写 真は「好きなもの」ではなく、「自信のあるもの」でした。何の確証もありませんでしたが(^^;    就職時 期になり、新卒でカメラマン募集のあるところを探し、ある出版社にたまたま採用されました。

(山田):   質問から少しずれますが、あとの質問への布石になりますので、もう少し 続けさせてください。新入社員で初出社した日、先輩カメラマンから「今日から君はプロカメラマン」と宣告されました。 それからは修行の日々でした。アシスタントを3ヶ月だけやり、あとはOJTです。学校と違いプロの世界では、写真の良し悪 しの評価がモロに下されます。写真学科で習ったことなど4×5の使い方以外ほとんど役立ちませんでした。あらゆるジャン ルの撮影を経験していきました。広告と記事の両方がありました。(この両者で求められるものは全然違います) 毎日何本も の仕事、取材やロケをやり夜はスタジオ。土日もがんがんやる。またその会社は現像する時間あるならは次の撮影をしろと いう考えだったので、学校卒業後は暗室作業は一切していません。どんなにしんどくても、体調が悪くても仕事はつぎつぎ やってきます。「撮り直して来い!」と再撮をくらうこともしばしばでした。そして何も出来なかった新人も徐々に育ってい きました。入社7年目に独立しました。先輩方7人ほどはまだ社員で残っていました。

   (編集部注記)   OJTは on the job training の略で、実際に仕事をしながら仕事を習得すること。


人物写真について

(編集部):   木村元一氏の、この月刊誌、またデジカメ交歓会では特に肖像権の抵触 の危惧から人物写真を避ける建前になっており、読者の皆さんの投稿写真も各地の風景写真が主で、人物写真という 分野に余り馴染みのない方が多いと思います。山田さんはポートレート、旅行、広告がメインなお仕事と伺っておりますが、 ポートレート写真の魅力とはどんなところにありますでしょうか?

(山田):   私の先輩カメラマンが昔言ってました「人が写ってない写真はアカン」 (笑)私が言ったんじゃないですよ(笑)私が言ったのは「人は見かけによる」という言葉です。人物写真というのはその人間 の積み上げてきた経験や内面を映し出すことが出来ると思う・・という意味です。もうひとつ、被写体と写し手の関係も映 し出されますね。神原さんの私の写真に対する寸評で「撮影者とモデルの真剣勝負」と言われていますが、まさにそういう ことです。財界トップなど撮るには、カメラマンも駆け出しでは無理です。人間対人間これが最大の魅力でしょうか。仕事 も早く終わりますし(爆)

(編集部):   そのポートレートの分野で写真集「現代美術家の肖像写真」という、世 界的に有名な、しかも美術界にあって前衛的な活動をなしてきた人々のポートレートを撮影なされたわけですね。手元に御 本がないのですがウェブでその一部を拝見しましても、これはとてもすごいお仕事をされたと感動をいたしましたが、この 写真集の撮影の際に特に気をつけたこと、工夫したこと、苦労したことなどお話していただけたら、と思います。

(山田):   これは仕事ではなく私の作品です。この撮影において最大のポイントは 「どうやってアポを取るか」です。ビッグネームですからね。相手のところに撮影を申し込んでもほとんど相手にされない でしょう。それで 全て日本で撮りました。知り合いの中村信夫さんという美術評論家が毎年北九州でこれらアーティスト を呼んでいたので、そこに撮りに行きました。近づいていろいろ話をしてから「写真撮らしてほしい」という方法をとりま した。写真集発行時点で5年、その後WEBだけに出しているものを2年。合計7年間のプロジェクトだったわけです。撮り方も 初期と後期ではかなり変わっています。Webのなかのフィリップキングが初期、ナイジェルロルフが中期、ハミッシュフル トンが後期です。

(編集部):   前の質問と重複しますが、モデルの思想、性格、作品等を把握の上で、 いざスタジオでモデルと向き合うわけですが、撮影前、撮影中のモデルとのやりとりについての思い出深いエピソードがご ざいましたら、、お伺いしたいと思います。

(山田):   はは こちらも先に少し答えちゃいましたね(笑)スタジオではなく、バッ クペーパー持参で一回一回セットを組みました。なんといっても思い出深いのは私のHPトップ画面のナイジェルロルフです ね。八ッセルのポラを見た瞬間すごく気に入ってくれました。「一緒に仕事しよう来月」とまで言われました。結果的には 実現しませんでしたが(^^;


デジタルカメラについて

(編集部):   デジタルカメラに関する質問ですが。オリンパスE10、現在はニコン D100とフジS2をお使いになられているということですが、ハッセルブラッドを別として銀塩のニコンと明確な使い分 けはされていますでしょうか?また使用頻度の多いのは銀塩とデジカメのどちらでしょうか?

(山田):   私は35ミリについてはほとんどデジタル化しました。「ポジで撮って」と いう要望でないかぎりデジタルです。

(編集部):   従来の、プロとアマチュアの写真のとり方の違いの一つに物量の差、つ まり撮影フィルムロールの数の違いがあったと思いますが、デジカメはその垣根をいとも簡単にとりはらってしまいました 。そういう意味でアマチュアはプロに近づいた、もっと正確に言うと、プロの土俵に上がることが可能になったと思います 。他にも、職人芸的な暗室技術もフォトショップをマスターしたらアマでもデジタルイメージで可能になりました。もちろ んいい写真は物量の差で簡単に決まる物ではないことは重々わかった上で、あえてお尋ねしますが、プロとして危機意識を お感じになりますでしょうか?

(山田):   この質問はするどい神原さんにしてはめずらしく的をはずしていると思い ます。(まちがった一般論の代弁かな?)私の入社以後の修行時代のことを読めば少しわかっていただけると思いますが・・・ これが布石でした。逆に物量の差の部分は、合っていると思います。上達の一番の道は「たくさん撮ること」ですから。た だフィルム現像代がかからないから増やせる、程度の撮影量の増やし方では氷山の一角です。プロというのはなんの仕事で もそうだと思いますが、依頼者の意図を瞬時に察知する、依頼者の要望を満たしその要望以上の結果を出す、ということだ と思います。そういう様々なケースの蓄積がプロのキャリアとなるのであって、機材の進化とは別物です。むしろ危機感を 感じるのはプレビューによるライティング確認で早く上達できることですね。ただAFとかもそうですが、結局プロのほうが より十二分に機能を使いこなしてしまうということもありますね。

   もっと危機感を感じるのはWebの発達によって紙媒体が衰退していくこと。そしてweb の写真はいい加減なものでいいという風潮があることですね。


   (山田氏注記)   誤解され る前に・・・私はプロがアマチュアよりえらいと言っているのではありません。アマチュアは純粋に作品として撮るのに対 し、プロが仕事で撮るというのは、依頼者や読者の要求に応えるためのものであり、全く別物だということです。

写真と人生

(編集部):   最後に、山田さんの人生にとって写真という芸術はどんな意味を持って きたか、そして写真とご自身の関わりについての将来の希望、抱負についてお尋ねしたいとおもいます。なにやら禅問答み たいですが、dgckでの山田さんの書き込みを読んで、この方はほんとに律儀な優しい方だ、と思い、また「現代美術家 の肖像写真」の持つ緊張感や撮影者の妥協を許さない真剣さを感じまして、この質問でなにか良いお話が聞けるような感じ がいたしますので。

(山田):   おそれいります。私にとっての写真とは、学生時代は「課題でやんなきゃ いけないめんどくさいもの」新人時代は「つらく苦しいもの、でも評価されるとうれしいもの」(そのまんま仕事という感 じですね)30くらいからは、「これでしか仕事が出来ないもの。」デジタルになって「また面白くなった」

   写真を撮っているときの私が多分一番本当の自分だと思います。私が存在する一番の 理由、それが写真ですね。

   もっと年をかさねてからでないと禅問答にはお答えできなそうです。将来の希望・・ ・今は最悪なのでまたバブル期のように稼ぎたいです(笑)あとは後継者を育てたいですね。



   (編集部後記)   プロ写真家 のお話、いかがでしたでしょうか。山田氏の徹底したプロ意識、職業写真家であることのきびしさ、芸術としての作品と仕事 としての写真、デジタルに完全移行した先進性、デジタル化に伴う危惧について等、素人衆には「とても為になった」などと いう平凡な言い方ではすまされない、腹にこたえる重みのあるお言葉でした。特に、「そしてwebの写真はいい加減なもの でいいという風潮があることですね。」というコメントは、ウェブ上に作品を投稿する読者の皆さん、皆さんの作品を掲載 する我々ウェブ発行者には、これからの重点課題となりましょう。山田様、ありがとうございました。



   このウェブページは「月間デジカメ作品第9号」の記事の一部です。 「月間デジカメ作品第8号」へは http://digicamworks.net/Gekkan/Sep03/Gekkan9.htmlをクリックして下さい。


(下記廃刊後記入)

   (「月刊デジカメ作品」は廃刊なっています。
続刊はデジカメワークス」(ここをクリック)をお楽しみください。)